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たった一度の人生をかけがえないものにするには

今週のお題「2017年にやりたいこと」


先日、母校のOB野球大会で同級生と顔を合わせた時、「なんかこの前会ったばかりのような気がするな」なんてお互い言い合ったけれど、本当に1年が過ぎるのが早くなったように感じる。

大人になると、子供の頃よりも時間が進むのが早く感じるようになる。とある生物学者の一説によると、子供の頃は細胞の新陳代謝が早く、大人になるとそれが遅くなるけど、地球の回転周期から得られる24時間はいつも一定なので、その時計と比べると、自分の体内時計は遅れる一方となるため、実際の時間は早く感じてしまうようになるとのこと。
わかったようなわからないような話だけど、たぶんそうなのだろう。
あるいは、子供の頃はあらゆることが未経験で、いろんな出来事を新鮮に感じるけれど、年齢を重ねるにつれ経験や知識が蓄積されることで日常がルーチン化され、日々を漫然と過ごしてしまうことで早く感じるのかもしれない。

さて、2017年にやりたいことだけど、やっぱりツーリングかな。あと、昨年断念した星新一賞にも応募したいと思う。
僕がオートバイに乗って観光に赴くようになったのは、東浩紀さんの著書「弱いつながり 検索ワードを探す旅」の影響が大きい。

インターネットを通じて人は様々なことを知ることができるようになったけれど、インターネットが登場した20年前頃とは様相が変わってきていて、現在ではインターネット側がユーザーが欲しているであろう情報を予測して提供するようになってきている。

例えば、検索エンジンにワードを入れると予測ワードや検索結果にマッチした広告が出てくるわけだけど、あれはユーザー1人1人によって異なるわけで、人はインターネットで自分が見たいものを選んでいるつもりでも、実はインターネットによって選ばされている側面がある。「あなたはこういう人間だからこういう情報(欲望)が欲しいんでしょ?」といったように。そして、今後その精度の向上や傾向はますます強まっていくに違いない。

そして、インターネットは「強いつながり」を強化する。つまり元々仲の良い人たち、属性が同じ人たち、同じ価値観の人たち、同じ組織に属している人たちの結びつきを強くするツールなのだ。Facebookにしてもtwitterにしても気に入らない人間はどんどんブロックして、自分にとって都合の良い人間たちだけとつるむことができる。それは居心地の良い世界かもしれないけど、変化の無い世界でもある。予測可能な世界でもある。自分で選択しているつもりが、グーグルによって見たいものだけを、選びたいものだけを選ばされ続ける人生になってしまいかねない。
人は環境に規定される生き物だから、強いつながりの中にだけ居続けると、その環境の枠組みの外にあるような考えや価値観が存在することすら認識できなくなってしまう。強いつながりの中で自分の頭だけでひたすら考えていても新たな検索ワードは出てこない。ではインターネットの提示する予測を裏切るにはどうすればよいのか。メディアや他者が作り上げた欲望ではなく、自分の欲望を見つけるにはどうすればよいのか。

一度しかない人生をかけがえのないものにするには「弱いつながり」が不可欠だと著者は語る。つまり自分の行ったことのない場所に実際に足を運んでみるということだ。意図的に不確定な環境に身を委ねてみることだ。そこには自分のことをあまり知らない人がいて、そういう人たちが思いもよらないようなアドバイスをくれたりするかもしれない。強いつながりの中では自分のことをよく知っている人たちばかりだから現実的な予測可能なことしか言ってくれない。

でも「弱いつながり」だけで生きていくのもあまり現実的ではない。人はずっと共同体の中で承認されることで生きてきた生き物だからだ。最近、ブログ界隈でとある新卒フリーランサーがキャンピングカーでの車上生活を挫折し、ずいぶん話題となった。やはり「職業は旅人」は面白そうだけど、きつい。ずっとは出来ない。

「強いつながり」だけだと人生はどんどん予測可能で規定されたものになっていく。一方で「弱いつながり」だけだと持続可能性がない。

したがって「強いつながり」に「弱いつながり」を取り入れるのが最も現実的といえる。すなわち「観光」である。環境を変えるというと、つい移住みたいな話になってしまいがちだけど、移住では、別の「強いつながり」に属するだけだ。つまるところ「生きる」とは生活を継続することに他ならないのだから、最も持続可能なのは、なんらかの共同体に所属しつつ、つかの間に旅に出る「観光」ということになる。

正直、かけがえのない人生なんて幻想なんじゃないかという気がしないでもない。一方で、どんな生き方をしようとも、かけがえのない人生だと主張する人もいるだろう。
それでも僕は2017年もオートバイで観光に出向いていきたいと思う。